悲しいというより

Fxxkという言葉が適切すぎるような、なんてサイテーで、馬鹿げていて、呆れて、笑えてしまう話だ。

 

あの夏の、蒸し暑い日々に、私は天秤にかけられ、結局もう一人に負けた。その人の中で。もう一人が選ばれた。それだけだった。

仕掛けたのはあっち。好意みたいなのをちらつかせて見事に釣り上げて、私は適当にあしらわれて終わっていた。あの人の中では。

 

わかっていた。大していい人でもないってこと、は。なのに止まらなかった気持ちの行きどころは何処にもなく、吐きそうになりながらなんとか涙に変えて押し出して。

努力など、神様もあの人も見てはくれないし、そこに情なんてかけてくれなかった。そして半年経っていた。なんてことだ。くだらない。なんて人。

 

 

男なんてみんな浮気する生き物だ、と。平気な顔して、更には意地の悪い顔をして、笑って、あの人は言った。

きっと私の思う恋愛と、違うものを恋愛としているような、定義が違って会話がちぐはぐになるような、違和感しかない会話から逃げ出したくて、目線を車の外に投げ出した。

面倒だった。全部ぜんぶ。こんな私も。1ミリ残った未練も。湧き上がる悔しさも。

 

彼にとって恋愛は遊びのひとつだ。一人を愛さなくていいのだ。誠実より楽しさ。楽しければいい。それで相手も傷つかないなら、万々歳。

 

私が呪いをかけられるなら、

いつか、嫉妬や独占に囚われるような、手に入れたくて仕方なくてでもなにも見えなくてもがいて、好きで堪らなくて焦がれて泣いてしまうような、そんな恋に落ちてしまう、呪いを、彼にかけたい。

痛いほどに、誰かを愛してしまえばいい。そう心から思う。死ぬほど誰かに囚われて、振り回されたらいいのに。

 

悔しかった。とにかく。最初から。どうにもならない自分の気持ちが、嫌だった。

 

最初から大事にされてないことに気づいてた旨を吐き捨てれば、そっか、頭いいもんね、と返された。

そんなの受け取り方次第だから知らないけれど、私は一番バカだ、と、そう話したときには、もうなにもかもどうでもよくて。

 

人はバカになるから恋愛するんですって、教授が言ってました。

なんて、もう結論もなにもなくただ話した。

 

理屈を覚えた人間という生き物でも、恋愛は本能的であって、理論ではどうにもならないところがおもしろい、と、あの日教授は穏やかに、楽しそうに語っていた。のに。なんてところで言うんだ、趣旨違うし。と、少しげんなりもして。

 

ただ、でも本当にどうしようもない恋だった。

連絡がつかなかった謎の期間が明らかになったって、それはなんの慰めにもならなかった。

ただ私よりあの子が好き。残念でした。

それだけ。

 

隣に座るこの人、は、ただサイテーな人。

なんで好きだったの、なんでこんなに、そればかり頭に響いてうるさかった。

そして、昔も、今も、今後も、大して私を想ってくれることもない。

言質をとったら、もう、この人といる意味なんてない。

今回は本当にレアケース。ただの興味と少しの心配で会っただけ。

私が元気だったら会ってないですか?という言葉に、少し間を置いて、頷くその顔を、本気で叩きたかった。

 

帰ります。と、助手席から相手を追い出した。

どこにもいかず、車で話した2時間は、私に喪失感しか与えてくれなかった。

運転席に体を沈めてただ、呆然とした。

なんだこれ、馬鹿みたい、悔しい。そればかり。

 

なんとか帰りついた後は現実から逃げるように眠った。

目が覚めたら苛立ちと虚無感に追われて参ってしまったけれど。

 

でも長い目で見たら、実らなくていい恋だってことは、とっても明らかで。

いつか記憶から消えることを祈っている。いや、消す。私は、消すんだ。こんなのなんの肥やしにもならない。犬も食わない。

 

 

ああ、なんてバカげた恋!どうしようもなくバカな私!そうやってたくさんバカやって、最後に笑えたらもうそれでいいの!さよならサイテーな恋!