何が正義で、人権で、守られるべきものってなにかわからない。

私に性的いたずらをした人は、たくさんの信頼と人望を背負って今日も人権を語ってる。

たくさんの時間をかけてもダメだった、この折れ切った心が、底の方で静かに息をしている。

清廉潔白な人なんていないよ。わかってる。あの人が偉そうに語る人権で、救われた人だって多いのも知ってる。

どうしたらいいんだろうね、この心って。

カウンセリングを受け続けてる。でもこの傷に触れる勇気がない。

 

今日もあの人は多くの人に人権を語るし、国を動かすんだって力強く話してるだろうし、私にしたいたずらなんて忘れてしまっているのはわかってる。

今更なにか動く気はない。証拠もない。さらにあの人には弁護団がついてる。同じ空間にいたこたもある。知ってる。国に勝訴したのも知ってるよ。テレビでも見た。わかってる。

 

私の中だけで15年経っても生々しく蘇る記憶が、思い出されない間も静かに私のどこかを腐らせ続けてる。

誰を信じたらいい?誰も信じないほうが、傷つかないのはわかってるよ、それでも、聞きたくなる。

誰をどう信じたらいい?あの頃必死に信じようとして頼った人は、私にいたずらをした。それでも、また私は誰かを信じて生きていくほうが、幸せと言い切れるのかな。

 

そんなもんだよ、っていう人もいたよ。わかってる。そんなもんだよ。貴方もそう済まされてきたのはわかります。私が悪かったです。そう言って次に活かしましょうって、言うよね。わかるよ。もうそれしかないもんね。

それしかなかったから放っておいたんだけど、今になってこんなことになりました。そちらは、お元気ですか?

 

私は偶然また、見てしまったよ。あの人が人権を語る場にいて、参加する人が真剣に質問する場を、見てしまったよ。

相変わらず尊敬されていたよ。参加者の人も一生懸命あの人から学ぶんだろうね。人権ってやつを。

ちょっとしたいたずらで踏み躙られた私の人権って、なんだったんだろうね。もうあの人の中ではそれすら無になっているのだろうけど。

私に人権なんてないのかな、笑っちゃうね。

 

どうしてほしいだなんて、わからないよ。じゃあどうしたいかって、ただ、本当に忘れてしまいたい。次に活かすことなんて、あるのかな。それがないなら本当に、消えてしまったらいいのにな。

家族、親戚一同、みんなあの人のことを信頼していたのにね。その裏側で、私だけがなにか、偶然穴に落ちてしまったみたいで。信じた私が馬鹿ですか?親戚も家族も、馬鹿ですか?

親戚はずっと何も知らないから、まだ信じているかもしれませんね。馬鹿ですか?

 

仕方ないよ、わかってる。自分でどうにかしろって言われるの、わかってる。言われてきたから。もう知ってる。面倒だよね、たくさんそんな顔、見てきたよ。

だからもうね、ちょっと疲れたの。話すことをやめたら世界は何事もなかったように時間だけ過ぎていくの。その時間が私の心の底を腐らせても、話さなければ、腐るだけで、もう傷つかなくて済む。話さないから、抱えて、眠るよ。

 

わかってるよ。もう、起きたくない。